「夢をかたちに。」


 20歳の中頃、大学時代を含めて8年間程過した九州をあとにして、東京で生活を始めました。住みはじめて二年くらいした頃だと思いますが、神奈川県の逗子市で仕事があり打合せに行った時のことです。逗子海岸からさほど離れていない所にある逗子商店街の中の洋装店の仕事をしました。もう何年も、多分何十年も逗子の人達に様々な衣料品を提供してきた店だと思います。
 今思えば現在の自分くらいの年齢だと思いますが、ご年配のご夫婦が現金の入った封筒を出して来て「これでいい店を作って下さい」と手渡されました。「これしかありません。」と。ご夫婦が、何年も何十年もお店を続けて、蓄えられたお金の重みを感じた瞬間でした。工事は確か夏場の暑い頃一ヶ月くらいだったと思いますが、開店したころ奥さんが「この商店街で一番オシャレなお店になった」と同じ商店街の方から言われた、と嬉しそうに話してくれたことを思い出します。
 

 僕らの仕事の基本はここにあります。「夢をかたちに。」